か行

カウンティ

火星は16の州に分割されており、これをカウンティと呼ぶ。名称は次の通り。

アルバ、テンペ、タルシス、シレーン、ソリス、バシリア、ネレイダム、アーガイル、マルガリティフェル、アエリア、シルティス、ヘレスポントス、ヘスペリア、プロメテ、キメリア、エリシウム。

火星横断鉄道

16あるカウンティの主要なネストを結び、最終的には火星を一周する予定の巨人列車。
路線はまだ建設途上だが、開通した部分から随時運行を開始している。火星は嵐が多く、また大気の組成からも航空機での移動が制限されるため、ネスト間、カウンティ間の大量輸送の主役の地位を獲得している。
また、路線拡張のための橋梁やトンネルの建設で糧を得ている労働者も数多く、それ自体が火星における一大産業でもある。
激しい風に耐え、また大型LEVなどの荷を運ぶためもあって、その車体は巨大で重い。動力には閉鎖型の超高圧ドライスチームエンジンを採用しており、高熱で乾燥飽和した蒸気をさらに圧縮してパワフルに動輪を駆動する。

なお、連結されている貨車に載っているコンテナは、エンダー号やジェイムズ達の乗っていたトレーラーが抱えているのと同じく変形六角柱型の統一規格品。

火星植民地連合(UCM=United Colonies of Mars)

各カウンティは母国に準ずる独自の行政組織を持つが、各カウンティ代表による火星連合自治政府(UCGM)のもと、通貨(UCドル)やいくつかの行政の統合が行われている。
クリュセ湾に面したマルガリティフェルカウンティにUCM理事局が置かれ、事実上の首都として機能しているものの、火星はあくまで植民地に過ぎず、地球上の各国家に対する発言力は弱い。

火星のベルセバ基地にて暴挙に出たバロウズがエドガーに対して「治外法権がある」と発言していることからも、火星が地球の植民地であることが伺えるであろう。

環境正常化推進協会

マーシャンによる火星原理主義者団体のひとつ。
火星のテラフォーミングに異を唱え、天然の火星の姿が失われることを、大きな科学的損失と考える考古学者や天文学者から天地を作り変えることは神への冒涜だとする宗教家、人類が環境に手を加えること自体を非難するエコロジスト、果ては火星に土着生命がいると信じ、テラフォーミングは侵略行為であるとわめきたてる者たちまで、多種多様な団体が存在する。
しかし、地球を厭って火星に移住して来た人々や、火星で生まれ、火星での生活しか知らない世代にとっては感傷的な戯言でしかない。

なお、ジェイムズ達が立ち寄った酸素工場を占拠した団体は、協会の名を騙ったテロリスト達である。

カンドール事件

2157年、某国管理区域カンドールカズムを調査中の調査隊が危機に陥ったとき、隣接するアメリカ管理区域の警備部隊がUNSFの再三の警告を無視して領土侵犯し調査隊を救出した。
カンドールカズムには「重要な国家機密(メタトロン鉱脈)」があったとして某国はアメリカを国際問題として提起、警備部隊全員が更迭となったが、彼らはマーシャンの間で「カンドールの勇者」として称えられた。
国家による線引きを火星にも持ち込もうとする地球側の意識と、国家的・民族人種差別主義的な思想が希薄である火星側との意識の差が如実に表れた事件。

ガントレット

物理的な衝撃を与えることに特化した実弾兵器の一つ。
投擲の際に加速させることによって攻撃力を高めており、その威力は敵機の防御の上からでも突き飛ばすことが可能なほどである。
軌道は直線的であるが、弾速の速さと相まって命中率も高い。

軌道エレベーター

地球の地表と宇宙を結ぶ超巨大構造物(ギガストラクチャ)。
静止衛星軌道に置かれたセントラルステーションから、長大な単分子ワイヤーを地上に下ろして建設された。
地上側はグランドステーションと呼ばれる人工島に接続され、静止衛星軌道から垂らされたワイヤーをステーで固定している。
その隙間にリニアモーター・トレインのレールが、貨物用に3レーン、旅客用に6レーン取り付けられている。途中にはセカンドステーション、ミドルステーションと呼ばれる中間駅があり、車両の点検設備や宿泊施設が置かれている。
エレベーター全体の重心を静止衛星軌道上に維持するために設置されたアンカーステーションには、地球重力圏脱出速度を上回る遠心力が働いており、ここから発進する宇宙船は噴射ゼロで地球の重力を振り切ることができる。
(ウーレンベック・カタパルトの実用化以降は利用されていない)

現在の地球では、軌道エレベーターを使ってセントラルステーションまで上がり、フェリーでL2に移動、そこからウーレンベック・カタパルトを使って火星圏や木星圏へ向かうというのが宇宙交通の手順として定着している。

2172年に火星軍が引き起こした「軌道エレベーター倒壊危機」により、アンカーステーションの損壊率20%以上、グランドステーションの37%以上が水没し、セカンドステーションとミドルステーションが切り離される程の大損害を被った。

空間圧縮航法

ウーレンベック・カタパルトによって空間を圧縮し、超高速で空間を移動する航法。
空間圧縮効果は直線的にのみ作用し、障害物を迂回することはできない。また、光速を超えることもできないが、宇宙交通にもたらした恩恵は大きく、最接近時なら地球−火星間を約2週間、地球−木星間を約2ヶ月で結ぶことが可能となった。
カタパルト付近は最も圧縮効果が高く、目的地に近づくにつれ、また時間が経過するにつれてその効果も減衰する。
目的地近くであれば問題とはならないが、圧縮効果が働いている最中に界面を越えて通常空間へ降りるのは非常に危険で、事実上不可能である。

ゲイザー

垂直方向に柱状のエネルギー波を発生させる兵器。
発せられたエネルギー波は敵の動力系に干渉し、その動きを拘束してしまう。
また地形や敵の装甲に弾着する性質があり、閉鎖空間や多数の敵機との戦闘においても効果を発揮する。

国連宇宙軍(UNSF=United Nations Space Force)

国連常任理事国が中心となって結成された軍組織。国連地球軍、連合宇宙軍とも呼ばれている。
地上には各国の警察や軍隊があるが、宇宙空間はいかなる個人も国家も私有してはならないことになっているので、活動できるのは国連管轄下の国際組織のみである。
下部組織に火星連合自治政府管轄の治安維持部隊が存在する。

コメット

指向性を持つエネルギー弾を撃ち出す兵器。
弾そのものが指向性を持っているため、目標への追尾能力に関しては非常に高い。
発射時に弾速を調整することも可能で、自機との連携による敵機への行動制限効果も期待できる。